ハイ●ライト
それは、かつて灰皿でした。
灯りが、記憶をあたためる。
棚の奥にしまわれたまま、
長く使われなかった灰皿。
自宅のリビングに、旅館の一室に、
昔は日本のどこにでもあったもの。
誰かをもてなす風景が少ない今、
その存在すら忘れかけていた。
そんな「暮らしの道具」に、もう一度、
役目が生まれるなら。
ソイロのリメイクは、過剰なことをしない。
「ほんのひと手間」だけ、
新しい命を吹き込むように。
灰皿をくるりと裏返し、
小さな灯具を仕込む。
ただ、それだけ。
その“それだけ”が、
美しさを引き出してくれるのです。
器は、奥ゆかしく下を向く。
ふだん目にする事のなかった
底の模様までも、ふと浮かび上がる。
控えめながら、確かな存在感。
見えないところにも、
つくり手の誠実な手仕事が宿っていました。
一つひとつが異なる形と色。
選ぶより「めぐりあう」。
同じものは二つとないからこそ、
暮らしの中で目に入るたびに、
ちいさな特別が訪れます。
懐かしくも、今の空間へ静かに溶け込む。
日本らしい美意識とともに、
アップサイクルができることを
そっと教えてくれる。
暮らしに、新たなあかりを。
それは、かつて灰皿でした。